井原鉄道十五景

長閑な景色に目を向ける

長閑な景色に目を向ける
001

なんでもない景色

駅から見る景色ほど情報量が少ない景色はない。田舎の駅などなおさらない。無機質に存在する線路、立ち止まりその景色に対し何も思わない。そんなことなど考えたこともない人が大半だろう。皆景色について考えるよりその先の駅に着いた後のことを考えているのだろう。意識を向けて景色を眺めていてもこれといった感情にはなれず、聞いていた音楽がいつもよりスッと入ってきたぐらいだった。しかし考えることが多かったり考えることが辛い時に眺めた景色はいつもと違って見えた。今まであった考え事や悩み事はその景色を見ている間は消え、何も考えることなくその景色を眺めていた。心が揺れたりすることのない景色は頭を空っぽにできる景色だった。
井原鉄道十五景はそんな頭を空っぽにできる景色のことである。